駅前に新しくオープンしたばかりのアイスクリームショップ。制服のままで、先生に見つかったらどうしよう? なんて少しだけ心配になる私をよそに、店員さんからカップを受け取ったヒカリちゃんは通りに面したテラス席に向かった。ヒカリちゃんは大人しそうに見えて、意外に大胆な一面があるらしい。仲の良い友達でも、案外知らないことってあるものだ。
「ヒカリちゃんって、好きな人とかいないの?」
だから、帰りにアイス食べに行こうって誘われたときは、学校では聞けない秘密の話をするには絶好のチャンスだと思った。
「いるよ」
自分から聞いておいてなんだけど、それはヒカリちゃんの口から語られると衝撃的な一言だった。だって、いつものヒカリちゃんは彼女のことが好きだという人が現れても、少し困ったように微笑むだけなのだ。
「それって……」
知りたい。でも、聞いていいのかな。夏の暑い日差しの下で、透明なスプーンを握るヒカリちゃんの白い手と、ミックスベリーアイスの赤色が鮮やかに目に染みる。
「ひみつ」
アイスのふちが溶けてしまうくらいの間言葉に詰まっていた私に、ヒカリちゃんはふふっと笑ってプラスチックのスプーンを差し出した。たったそれだけのことで、不思議と私はヒカリちゃんにもう何も言えなくなってしまう。結局この日も、ヒカリちゃんの気持ちは全然わからない。唯一理解できたことは、寄り道してこっそり食べるアイスの味は、いつもより甘いということだけだ。
2019/02/21