※ミカ→宙前提
きっかけは、ちょっとしたことだった。瑠璃たちと一緒に出掛けた時、ホログラムゴースト騒ぎに巻き込まれた私たちを、天ノ河くんとガンマモンが助けてくれた。頼りになる姿を見て、ちょっといいなって思った。ただそれだけの、些細なこと。
「これ、宙くんに渡しても変じゃないかな? この前のお礼、って」
「全然変じゃないわよ、いいと思う」
「がんばれ、ミカ!」
天ノ河くんは別に、あの場にいたのが私だから助けてくれたわけじゃない。事件に巻き込まれたのが他の誰かだったとしても、同じことをしただろう。私だけ特別じゃない。だから、同じくあの場にいたミカが、私と同じように思ったとしても不思議ではないことなのだ。
ミカは友達だし、瑠璃やアオイとも気まずくなりたくはない。だから、私だけが秘密にしておけば済む。天ノ河くんとは学校も違うし、会う機会だって滅多にないはずだから。
「あれ、さん。久しぶり」
そう言い聞かせていたのに、たまたま行った図書館で、天ノ河くんに出くわしてしまった。
「天ノ河くんはここ、よく来るの?」
「ガンマモンが図鑑にハマっててさ、色々見せてやろうと思って」
どうしよう。二人で話ができることが、こんなにも嬉しい。返却ポストまでの道のりを、一緒に歩く時間。それを少しでも長引かせたいと思ってしまう。
一方で、ミカのことが頭をよぎる。ミカも天ノ河くんが好き。思いを遂げれば、私はきっと友達を失う。
――でも、ミカだって、まだ告白したわけじゃないんでしょ?
心の奥底で黒い本音が囁く。私もミカも、天ノ河くんが好き。私とミカの立場は同じ。だったら、私だけが我慢する必要はないんじゃないかって。今この時を逃したら、天ノ河くんとは次にいつ会えるかわからない。まして二人きりなんて、こんなチャンスはめったに巡ってこないんじゃないかって。
「あのさ、天ノ河くん」
「なに?」
「このあと、時間ある? よかったら少し、付き合ってほしいところがあるの」
ごめんね、ミカ。私は良い子でいることを、やめようと思う。
20230812