※男主
「おかえり」と声をかけてくれたアンゴラモンへ返事をするのもそこそこに、あたしは部屋のベッドに倒れこんだ。アンゴラモンは手にしていた本を閉じ、心配そうに尋ねた。
「……友達と何かあったのかい?」
「別に、そういうわけじゃないけど……」
枕に顔をうずめて、くぐもった声で返事をする。あたしに話す気がないことを察したのか、アンゴラモンはそれ以上何も聞かずに読書に戻った。嫌な態度、とっちゃったな。でも他になんて言えばいいのかわからなくて、あたしはますます頭が重くなってくるのを感じた。
地元の中学校に進学した友達から、久々に集まろうって連絡があった。その子と会うのは小学校の卒業式以来だったから、約束した時は本当に楽しみにしていた。だけど当日待ち合わせ場所に現れたメンバーを見て、正直、思ってしまった。「瑠璃以外の子にも声かけておくから」って、女子の友達のことじゃなかったのね。
集まった中の一人、は小学校の時より少し背が高くなっていて、よく日に焼けていた。中学ではサッカー部に入ったらしい。と休みの日にわざわざ約束して会うのは初めてで、私服だとちょっと見慣れない感じがした。
あたしと、最初に誘ってきた友達と、と、その友達の男子の四人で一緒にお昼を食べて、話題のスポットを訪れて、写真を撮ったり、ゲーセンで対戦したりして。楽しくなかったわけじゃないけど、なんとなくいつもの自分でいられなくて居心地が悪い。あたしは、“女の子”という役割を演じさせられているような気がした。
それはの態度が、以前とは少し違って見えたせいかもしれない。少し口数が減って、馬鹿なからかいを言わなくなった。大人っぽくなったってこういうことを言うのかしらと、あたしはほんの少しの淋しさと共にそう思った。
駅で他の皆と解散したあと、たまたま家の方向が同じだったあたしとは、二人きりで通りを歩いていた。その時、ふいにが言った。
「俺、月夜野のことが好きなんだ」
教室でふざけていた時には決して見たことのない、真剣な顔。それを見た時にあたしが感じたのは、嬉しさでも驚きでもなかった。しいていえば、羨望。あたしはみたいに情熱を向けられるものを、まだ見つけられていないから。つまり、あたしはと同じだけの熱量で、気持ちを返すことができないということだった。
ミカに好きな人がいるという話を聞いた時、いつかあたしにもそんな人が現れるのかしら、なんて小さな憧れを抱いたことがある。だけど今は、そんな日が来るとしても、ずっと遠い先のことだとしか思えなかった。
2023/06/17