「なんてすばらしい志なの! 私感動したわ!! というわけであなたの望み通り、ジェネラルの役目引き受けたわ!!!」
「えっ……しかし、バグラ軍との戦いには危険が伴う。もう少しじっくり考えてもらっても構わないのだが……」

 ジェネラルを探し求めていたインペリアルドラモンですら若干引くほどに、は適応力の塊だった。

「なぜ!? 今更断る理由などなくってよっ! さぁとっととバグラ軍? とやらを倒しに行きましょう!」
「ま、まぁ、そこまで言うなら……」

 話が丸く収まりかけていた時、洞窟を激震が襲った。衝撃によって岩肌が崩れ、洞窟の細い道は見る間に塞がれていく。とインペリアルドラモンはユキミボタモンたちを抱え、急いでその場から駆け出した。そうしてたどり着いた洞窟の外は、がここに迷い込んだ時以上に雪と風が激しく吹き荒れ、はインペリアルドラモンの後ろに隠れて立っているのがやっとという有様だった。

 インペリアルドラモンたちを待ち受けるように立っていたのは、一人の少年だった。年齢はと変わらない子どもといっていいが、それぞれ巨大なデジモンを左右に配下のように従え、吹雪の中に堂々と立つ姿は支配者の風格すら感じさせる佇まいだ。

「何者だ!?まさか、バグラ軍――」
「あんな奴らと一緒にしてもらっては困る。俺たちはブルーフレア。そこのインペリアルドラモンに用があって来た」

 少年は、バグラ軍と間違えられたことに本気で怒りを覚えた様子でインペリアルドラモンの言葉を遮った。そして、分厚い灰色の雲に覆われた空の下でひときわ目を引く金色の髪を風になびかせ、挑発的な笑みを浮かべて言った。

「実力だけならデジタルワールド最強の戦士の一人といっても過言ではない貴様が、こんな辺鄙な土地に引きこもっているとはな。伝説の騎士の名が聞いて呆れる!」
「……何が言いたい」

 インペリアルドラモンは、静かに少年の言葉の続きを待った。

「俺の手下になれ! 貴様に子守りは似合わない」

 そう言い切った少年の目に、一切の迷いはなかった。威圧的な態度は、この戦乱のデジタルワールドにおいて、あまたの戦いを乗り越えきた自信の現れだ。そして、少年の誘いは、この辺境の土地を出てバグラ軍を倒す旅に出ることを幾度となく夢に見ていたインペリアルドラモンにとって心惹かれるものであったことは確かだ。

「断る」

 しかし、インペリアルドラモンは首を縦に振らなかった。

 インペリアルドラモンにとってユキミボタモンたちは、この雪深い土地で長い間生活を共にしてきたかけがえのない大切な仲間たちであった。それを“子守り”などと称されて、黙って従うことなどできるはずがなかったのだ。

「――よくぞ言ったわ、インペリアルドラモン!」

 そして、一目見た瞬間からユキミボタモンのあまりのかわいさに完全に魅了されていたも同じ気持ちであった。は荒れ狂う吹雪をものともせず、少年の前に進み出た。

「そこのあなた。さっきから黙って聞いていれば、ずいぶん偉そうなことばかり言うじゃない」
「……なんだ、人間がいたのか」

 金髪の少年は、そこで初めての存在に気がついた様子で言った。単純に今までインペリアルドラモンの影に隠れていたため視界に入っていなかっただけなのだが、わざと無視されていたと勘違いしたは頭に血を昇らせて宣言した。

「インペリアルドラモンは正義の戦士なのよ。あなたみたいな人の手下になんて、なるはずがないわ!」
「いいだろう。貴様らの言う正義とやら、貫く覚悟があるならば……この俺に勝って証明してみせるがいい!」

 少年は、の言葉を嘲るように笑ってみせた。そして、手にしていた“何か”を天高く掲げた。

「グレイモン! メイルバードラモン! デジクロス!」

 すると、少年の左右を固めていた二体のデジモンの姿が蒼い光に包まれ、一体のデジモンへと姿を変えた。重厚な金属の装甲に覆われたそのデジモンは獣のように咆哮し、とインペリアルドラモンの前に立ち塞がった。

「――メタルグレイモン!」

2019/08/27

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