それは、あまりにもあっけない幕切れだった。
夏休み明けに学校へ行った私を待ちうけていたのは、同じクラスの大空くんがどこか遠くへ転校したという報せだった。私は大空くんと特別親しかったわけではないけれど、たまに交わす朝の挨拶以外で彼と話ができるようになったら嬉しいと思っていた。でも、そのきっかけすら掴めないまま、彼はどこかへ行ってしまった。
漠然とした喪失感を抱えたまま、それでも一日は普通に終わり、放課後になる頃には私は何事もないような顔をして図書室のカウンターに座っていた。はっきり言って、図書委員の仕事は結構ヒマだ。貸し出しと返却カードの受付が主な仕事ということになっているけど、わざわざ放課後に本を借りに来る生徒はそんなに多くない。
数少ない例外は、男子の図書委員をしている新海くんだ。他の委員会に比べて楽そうだからという不純な動機で図書委員を選んだ私と違って、彼は当番でない日もよく本を借りに来る。そして確か、彼は大空くんと仲が良かったはずだ。タイミングよく司書の先生が席を外していたので、私は貸出カウンターにやって来た新海くんに声をかけた。
「それじゃ、新海くんも知らなかったの?」
「うん……勇仁がいなくなったのは、本当に突然だったから」
彼から聞いた話によれば、大空くんの転校はどうやら急に決まったことだったらしい。一介のクラスメートに過ぎない私はともかく、彼の一番の親友だった新海くんにすら、連絡先も何も知らされていないのだという。
「でも、ぼくは信じてる。勇仁とは、いつかまた会えるって」
窓の外を見上げる新海くんの横顔は、寂しげではあるものの、どこか力強ささえ感じさせた。新海くんはいつか大空くんと再会できることを、本気でまっすぐに信じているのだ。そう思えるだけの絆が、彼らの間にはあったのだ。
朝の「おはよう」以外に、自分から話しかけていたら、私にもそういう未来が見えただろうか。それはもう、一生答えが出ることのない問いだった。
2019/03/11